ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

やってもいいよね

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「ゴルフは何歳から始めても遅すぎる事はない」、そんな言葉があなたの残した本に書いてあった。

...ゴルフというものを嫌いだった。
結婚してすぐにあなたはゴルフを始めた。
それからは土曜や日曜はほとんど家に居なくなった。
半分は会社の仕事とは言え、子供が生まれてからも、学校に行くようになってからも、休日を子供と一緒に過ごした事なんかほとんどなかったはずだ。
そんなに裕福な暮らしじゃなかったのに、あなたの部屋にはゴルフの道具が溢れ、廊下まで大きなバッグや練習道具が占領するようになった。

私はみんなに「ゴルフウィドウ」と呼ばれ、時々あなたの知らない時にあなたのゴルフ道具に八つ当たりしていた。
子供の手が離れたころから、何度かあなたにゴルフをやらないかと誘われたけど、もうその頃には意地になってゴルフだけはやらないと言い続けた。
そのうちに、あなたも私を誘うのは諦めて、相変わらず休日のゴルフを続けて行った。
夫婦喧嘩もたまにしたし、親の病気や介護、子供の結婚や孫の誕生などの生活のリズムの変化もあった。

それでも、あなたがいない休日は当たり前で、それ以外はそれほどの問題も無く人生は過ぎて行った。
...あなたが、突然いなくなるまでは。

幸いな事に、あなたが残してくれたものでこれからの生活に大きな心配はない。
でも、休日にいないのは慣れてはいても、普通の日にもずっとあなたがいないのには慣れはしない。
流れが止まったような日々が続く中で、周りの友達や近所の人が気晴らしの遊びに誘ってくれた。
色々なサークルや、地域の活動、リクレーションの勧誘...
一応誘われた物を経験しては見たが、部屋の中でする物はあまり気晴らしにならなかった。
やってみて面白かったのが、外でやるゲートボールと、グラウンドゴルフ
身体を動かす事が、想像以上に気持ち良かった。

少しの間、近所の人に誘われたゲートボールのチームに入ってみた。
見かけよりルールや作戦が複雑で、結構熱中したけれど...チーム戦というのが気になった。
対抗戦で試合になるとチームの作戦が重要な要素になるが、それは別の言葉で言えば「誰かのせいで負けた」なんてことになる...そうはっきりは言わないが何となくそう言う雰囲気になるのが嫌だった。

ならば、グラウンドゴルフ...これはボールを結構強く打つ事が気持ち良かったけれど...

どうせなら、ボールが空を飛ぶゴルフをやってみようか...
ふと、そんな気持ちになった。
チーム戦じゃないから誰かのせいにならなくて済むし。

でも、ゴルフならあなたに誘われた時に始めていれば良かった。
あのころはそんな気持ちになれなかったけど。
...ならば、「今」が私がゴルフを始める「時」なんだろうか。

「ゴルフはいつ始めても遅すぎると言う事はない」
この言葉を励みにして、自分の人生の最後の遊びにして行けたらいい。
まだ、打ち方もルールも知らないし、道具も服もないけれど。


ああ...やっぱり、あなたがいる時に始めていれば良かったね。
これからあなたの経験した事を、私も経験してみたい。


ごめんなさい、あなた。