ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ゴルフ場の改造(改悪)

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あまりニュースにならなかったけれど、竜ヶ崎ccでの2014年日本女子オープンの開催が中止された理由が気になっていた。
本当に詳しい事情は判らないが、週刊誌や新聞の記事に寄ると10番ホールの松の木を切るか切らないかで問題が起きたらしい。
週刊誌の記事では、「その松の木がアンフェアだから切るか移植して欲しい」と日本ゴルフ協会から要望が出され、メンバーの総意でそれが拒否されたのだとか。

「その木があれば飛ばす人に優位になるので」と言う事での伐採要請だったというけれど、そんなことを言うのはおかしい...普通のゴルファーの感覚とは違う、どこか競技ゴルフ偏重のエリート意識のような上から目線を感じるのは私だけだろうか。
その木があると「アンフェア」だと言うが、元々ゴルフってゲームはコースのアンフェアさを受け入れる事が前提ではなかったか?
ゴルファーによって飛距離は「卑怯な!」と言うくらい違うものだし、老若男女・デブにヤセにチビにデカ...誰もが同じフィールドで戦う、不公平きわまりないゲームだ。
競技のスクラッチでなければ、ハンデを使って勝負を公平にしようという事も出来るけど、競技ゴルフなんてのは体重制も身長別もなにもないバトルロイヤルだ。
「フェア」というのは、基本的に審判のいないゲームで自分のプレーを公正なものにしようとする「意思」の話だ。
280ヤードじゃ超えない池を超えられるのは、飛ばないものにとっては悔しいけれどそれをアンフェアとは言わない(「汚えっ!」とは、思うだろうけど)。

別に有名設計家のコースがどれも良いなんて思わないし、竜ヶ崎ccなんてプレーした事がないので「井上誠一のせっかくの設計だから」なんて理由で伐採するなとは言えないが、「難しいから」とか「アンフェアだ」なんて理由でフェア(易しく)とかに改造するのは絶対反対。
メンバー総意の改造なら、それはメンバーの自由だろうけど。

私が遥か昔、テレビの「ドリームマッチ」を見て、その舞台となっていた東の宮ccに入会したのは、その難しそうなコースで精一杯のゴルフをしたかったから。
30半ばで始めたゴルフであっという間に熱中し、40歳そこそこで借金してメンバーになった。
ベント・コーライの2グリーンではあったけど、フルバックからのベントグリーンは気が狂うほど難しかった。
その当時はドリームマッチの直前に富沢誠三の設計した27ホールのうち、さつき・あおいの18ホールを誠三の息子富沢広親が全面改造したばかりで、グリーンは超高速、バンカーはふかふかでさらさらの砂でどういう風に入っても奇麗な目玉になった。
直接飛び込もうものなら砂に潜って消えてしまい、全員で砂掻きなんて事がよくあった。
関東の名門コースのハンデ5やハンデ6が平気で100を打つようなコースだった。

当然、普通のアベレージゴルファーは大変な事になった。
グリーンは競技の時より遅くしてあっても、バンカーに入るとまず1回じゃ出ない。
さつきの3番のショートは、競技のときでも2~3組、普通のときは5~6組がつまった。

...ここがある日メンバーに何の断りも無く、右のバンカーが埋められグラスバンカーになった。
確かに、それでとりあえずそこに打てればボギーでは収まるので流れは良くなった(Aクラスの競技でも6とか7はよく出た)。

そしてあおいの18番、397ヤードパー4。
右が崖になっていて、その下は池。
左は220ヤードから280ヤード近くまで池、それもフェアウェイから転がって簡単に入るようなっていた。
ただ、左に曲げ過ぎると左の丘の陰になってしまい、池に入ったかどうかが確認出来ない。
フェアウェイも狭く、右のOBを逃げて左の池、見える池を逃げて右のOBとかいつも何かドラマが起きるホールだった(関東オープンを開催した時、ある有名プロが初日ドライバー・2日目フェアウェイウッド.3日目ロングアイアンで池に入れ、最終日はミドルアイアンで池手前に刻んだなんて逸話が残った)。
...それが、ある日池が埋められた(勿論メンバーは何も知らされず)。
聞いた話では理事の一人が「最終ホールは難しすぎる」とかで勝手に埋めたんだとか。
この辺りからの経営やコース管理のいい加減さに、すっかり東ノ宮CCでの自分の競技ゴルフへの情熱が消えて行った気がする。

馬鹿な改造(改悪)をする大きな原因の一つが、改造しようとする側が「良いスコアが出なければコースの評判が落ちる」と勘違いしているからじゃないだろうか?
私が知っている限りのゴルフに本当に打ち込んでいるゴルファーは、スコアよりも挑戦しがいのあるコースを好む。
たとえスコアが悪くても、自分がどうプレー出来たかを重視する。
コースに負けたら、次の機会には絶対になんとかしたいと努力する...それがコースにとってもリピーターになる。
簡単で良いスコアが出たら、もう一回そのコースに行きたいとは思わない。

...話がずれてしまったが、竜ヶ崎ccのコース改造(松の木伐採)がメンバーの総意で反対され、試合開催が中止になったというなら...それこそが竜ヶ崎ccがメンバーの意思が尊重される「本物の名門」と言われる理由だろう。

東ノ宮ccが開場してから「東の西ノ宮ccになる」とか言いながら、結局ドリームマッチが終わってから低迷し倒産したのは、メンバーに何も知らさずに勝手に愚かな改造を繰り返した経営陣の見識のなさが、とても一流どころか二流にも値しないレベルだったというのが原因だろう。

今は大手のゴルフ場経営会社の手に渡って、ベントのワングリーンのコースになったけど...
富沢広親の改造当時の凄みはもう無い。