ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ゴルフの事じゃないけれど...

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新聞に、北海道での遭難救助中に死亡した男性の両親が起こした訴訟で、「遭難救助隊に過失があったので賠償金を払え」と言う判決が出た、とあった。

詳しく調べてみると、事件は2009年の2月に起きたもの。
積丹岳の頂上からのスノーボードに行った男性が遭難し、救助に向かった北海道警の山岳救助隊が、雪庇を踏み抜いて滑落し、遭難者が死亡したというもの。
これに対して遭難者の両親が、救助隊に対して8600万円の損害賠償訴訟を起こし、札幌地裁が道に1200万円の支払いを命じた、という。

この訴訟、どうなんだろう?
この救助途中に雪庇を踏み抜いたとき、救助隊員3人も一緒に滑落している。
救助隊員は自力で上がれたが、遭難者を引き上げるのに失敗して再び滑落してしまった、というもの。
厳冬期の冬山の悪天候の中での遭難、それに対する救助活動は救助隊員自身の2重遭難の危険を冒しての活動だったろう。
それが失敗して遭難者が死亡したからと言って、救助隊員や救助隊を訴えると言う事はどうなんだ?。
少し間違えれば、この救助隊員3人も死んだかもしれないのに。
...以前、山と渓谷社の山岳雑誌のイラストを長く描いていたので、彼等がどのくらい訓練し、鍛錬し、勇気と熱意を持って救助隊の仕事に従事しているか、わりと身近にそれを感じていたので余計にそう思う。
その仕事に、掛け値無しに「命」をかけている。
それに対して、「失敗したんだから賠償しろ」はないだろうと思う。
もしこんな事が当たり前になったら、救助する事が困難とわかった状況では、誰も救助になんか向かわなくなるだろう。


これに近い事がもう起きてしまったのが、産婦人科の問題だろう。
元気に出産に向かった娘に死なれた両親の悲しみは判る。
しかし、その両親が起こした医療訴訟で、産婦人科の医者が罪に問われた結果、産婦人科の数が激減してしまったのではなかったか?
それ以降、妊娠した女性の苦労は大変なものになったのではなかったか?
...どんな出産も絶対安全なわけではない...女性にとっては、本当に命がけの体験なのだと聞く。
医者の立場からすると、もし非常な難産でも処置に失敗すると罪に問われるなら、産婦人科医なんてのはやめた方がいいと思うのは当然だろう。
出産には、いつだってそういう危険があり得るというのに。

...その訴訟以降に、少なくなってしまった産婦人科の影響で、辛い思いをした女性はどのくらい増えたんだろうか?

親の気持ちは判るけど、訴訟を起こしてはいけない事があるんじゃないか?
亡くなった遭難者や娘さんだって、自分のためにそういう影響が広がる事を望んじゃいないような気がしてしょうがない。

これを認めた裁判官は、「助けられそうもなかったら行かない方がいいよ、賠償させられるから」とでも言うのだろうか?
こんな事が続くと、日本が違う国になってしまうような気がしている。