ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

世の中を悪くする裁判結果  (2016年12月2日)


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また、この日本の世の中を悪くするしか無いトンデモ判決が出た。
地裁辺りなら、最近はしょっちゅう「これは変だろ?」という裁判結果が出ているが、大概そう言う判決は高裁や最高裁で修正されてなんとか「しょうがないか」レベルの結果に落ち着く事が多かった。

しかし、積丹岳で起きたスノーボーダーの遭難事故の救出中に起きた事故に着いて、救助隊に損害賠償1800万円と言うのが最高裁で確定してしまった。

馬鹿な裁判結果だと思うし、最高裁までそうなのかと改めて失望してしまった。
勉強ばかりやって来て裁判官になった超優秀な頭の中の、法律通りのチェックだときっとそう言う結果になるんだろう...法律にきっちりあわせた正解と言う訳だ。
だけど、この馬鹿な事を訴えた遺族は、この結果が将来にわたって何人何百人の山岳遭難者の命を奪う事になるか、考えた事があるんだろうか?

これは、スノーボード滑走区域ではない山岳に自分の意志で入り込み、結果遭難したスノーボーダーの救援要請に、悪天候をついて救助出動した北海道警のレスキュー隊が、遭難救助に失敗した結果遭難者を死なせてしまったという事件。
救援隊の人も雪庇を踏み抜き二重遭難する程の条件の悪い救助活動中、遭難者を乗せて固定していたストレッチャーが、それを縛っていた木が折れた為に滑落して、結果凍死したと言うもの。
これに救助活動に落ち度があったからと言う理由で、1800万円の賠償金とは..。

私は実際に山をやったり、山の何程を体験した訳ではないが、以前「山と渓谷」と言う雑誌のイラストの仕事を長くやっていて、その関係から山岳救助隊の人とも知り合い、その教本を作った事もあった。
彼等はその仕事で食っていると言うより、その仕事にプライドを持ち、山男として山仲間の遭遇したピンチを絶対に自分達が助けると言う仕事を越えた情熱を持っていた。
その給料はとても命の危険をいつも感じて働く様な仕事に対する評価とは程遠く、殆どボランティアの様な感覚だった。
また一時的に集められる山岳救助隊と言うのは、山小屋の主人や近所の山岳会のメンバー達で、これは命がけであっても本当にボランティア程度の報酬しか出ない。

そう言う人達が遭難事件があった時に、悪天候の中(遭難事件が起きるのは殆ど全部悪天候)命がけで働いて、失敗したら損害賠償ではたまらないだろう。

こんな判決が確定したなら、今後は遭難救助の要請があっても「確実に助けられる条件が揃う迄」絶対に出動しない方が良いと言う事になる。
積丹岳の場合なら、悪天候が回復する迄ずっと待機していれば良かった。
隊員が雪庇を踏み抜く危険があるなら、そんな場所には近付かない方が良いに決まっている。
そうしていたら、救助要請があった時には相当弱っていたと言われている遭難者が生きている訳は無いけど。

この事件の遺族の裁判と言うのは、以前あった出産時の事故で亡くなった人の遺族が訴えて、担当した産婦人科医が逮捕された事件と重なる。
あの遺族の起こした裁判で、結果どうなったかと言えば、「そんな事例で逮捕されるなら産婦人科なんてならない方が良い」と産婦人科のなり手や医院が急激に減り、地方では産婦人科が無い町や村が増えた。
その結果、何人の妊婦や子供が死ぬ事になったんだろうか。
また、そんな事なら子供が産めないと、子供を作るのをやめた人達がどのくらい居たんだろうか。
その遺族は日本をこんな風にした事に対して、どう思っているんだろうか。

これからの山岳救助は、プロの山岳救助会社を作り、料金交渉で出動するかやめるか判断するようになるかも知れない。
失敗したら損害賠償があるんだから、それに見合う高額料金が当たり前になるだろう。
一回につき、数千万円から億の単位も必要かもしれない。
この金では見合わないと判断したら、途中でやめてしまう事もあるだろう...ビジネスなんだから。

こんな裁判所がこんな裁判結果を出すから、日本が嫌な国になる。
心意気と情熱と正義感は、金銭とは別にあるのが日本ではなかったか?
「お天道様が見ている」が、日本の判断基準ではなかったか?