ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

悪魔のような...

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Mさんは、最近のラウンドのほぼ9割は上司のK氏と一緒だ。
今の部署に配属されてもうすぐ2年、直属の上司であるK氏に誘われるゴルフは、嫌とは言えない。

...30近くなって殆どの休日をK氏と一緒にゴルフをして過ごす、というのも味気ないとは思う。
しかし、K氏が直属の上司なので、自分の休日を把握されているという事と、今現在つきあっている彼女もいないお気楽独身生活という事で、誘われやすい立場ではあるんだろう。

ただ、困っているのが「今日はいくつで握ろうか?」というK氏の誘い。
「ゴルフを真剣に楽しんで、その上早く上手くなろうと思ったら、チョコレートは欠かせない」がK氏の持論。

...今の会社に入って、仕事の関係上必要と言われて始めたゴルフ。
学生時代に野球をやっていて、球技には自信があったため、すぐに同期の連中よりは上手くなるだろうし、シングル入りだって1~2年で出来るだろうと思っていた。
しかしそれから5年、相変わらず100を切ったり切らなかったりで、「飛ぶけど曲がる」「いつもスライス」「小技が下手」「パットがノーカン」という評判だけが知れ渡り、同期の中でさえ「下手」という立場になってしまった。
結構本気で焦ったりしたんだけれど...「才能が無いんだ」と諦めかけていた。
そして2年前、今の上司の下にやってきた。

「おう、いい身体しているなあ。」
「飛ぶけど曲がるんだって?」
「独身か? 彼女もいない? じゃあ、休みには俺とゴルフにつきあえ。」
という事で、殆ど休みの度にK氏とのゴルフをする事になってしまった。
もちろん土・日のゴルフは高いので、平日に有給をとったり、代休を利用してのゴルフだ。

そのゴルフが、きつい。
ハンデをもらっても、毎回数千円ずつ巻き上げられる。
おまけにK氏は「プレーが遅い!早く打て!」「下手くそがなに歩いているんだ!走れ!走れ!」「考えたって入らねえんだから、早くやれ!」「ルールブックを見ろ!それは2打罰だ!」「馬鹿やろう!隣に行く時は帽子を取って挨拶しろ!」「フォアーって言う時は死ぬ程でかい声を出せ!」「自分が打ったんだ!運が悪いなんて言うのは10年早い!」「下向いて歩くんじゃない!若いのにジジイみたいな顔すんな!」「コースに文句言うな!ありがとうって言え!」...

親にも言われた事の無い罵詈雑言を浴びせられる。

たまにいいライから、チャンスを決めようなんてすると、「ほう、トップしそうなライだなあ..」
「ちょっとボールが浮いているなあ...」「右の池が効いているなあ..」とか呟いて、自分を動揺させる...大体期待通りにミスをする自分を、腹を抱えて笑い転げるし...

おかげで、ゴルフ以外に使う小遣いが無い。
残りの所持金が少なくても、K氏は鬼のように「これは月謝だ。ちゃんと払え!」と握りの金を奪い取って行く。
なんとかK氏に、ニギリで勝ちたい。
あの上から目線を、ぎゃふんと言わせたい。
...しかしK氏は上手い。
変なフォームで飛ばないのに上手い...自分に文句を言ったりからかったりしながら、いつの間にか80前後では回っている。

もう2年になる。
さんざんいたぶられたおかげか、同期の奴らよりは良いスコアで上がるのは当たり前になったけど、まだK氏からは一度もニギリで勝った事が無い。
畜生!...鬼め...
「俺にどうしても勝ちたいんなら、いくらでもハンデ増やしてやるぞ」なんて言いやがって。
ハンデ一杯もらって勝ったって勝った気なんかしない...

はじめにもらったハンデで勝ったら、そのうちにスクラッチだって勝ってやる。
今週もラウンドだ。
ワクワクしてくる。
今度こそ...鬼め、待ってろ...