ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

クールな女

イメージ 1

Tさんは、ボールをマークしてラインを見る。
「この瞬間が、なんとも言えず好きなんだなあ...」と思う。

Tさんは関西出身の女性。
大学を出てから公務員試験に通り、東京で公務員になった。
その勤務先で大学のゴルフ同好会にいたという女性と同僚になり、付き合いにも必要とわかってなんとなくゴルフを始めることになった。
...そして、間もなくゴルフの魅力に取り憑かれ、熱中した。


(毎日書類とにらめっこの仕事には、土・日と休める時間のゴルフが絶対に必要と感じた。
幸い週2日は必ず休める公務員生活、すぐに「遠いけど面白い」と言う評判のコースに入会し、もう10年以上土・日の2日間コースに通っている。
土曜日の朝、2時間かけてコースに行ってプレーをして、その夜はコースのロッジに泊まり、日曜日に月例なりプライベートなりのラウンドをして帰る。
ハンデは11まで行ったけど、そこで止まっている。
...自分で、こんなもので十分なんて思っているから、これ以上のハンデの更新はないだろう。

5日間の公務員としての生活と、土・日のコースでの日々は充実していて何の不満もない。
コースに行けば、必ず10人以上の仲の良い常連の人達がいて楽しいラウンドが出来るし、月例なんかでは同じクラスに知らない人はいない。
レストランで座る席も大体決まっているし、コースの支配人やプロや研修生、レストランの従業員までまるで家族のような付き合いだし...

今までに好きな人がいない訳でもなかったけれど、ゴルフをやめてまで付き合う気もなかったから、大したドラマにもならなかった。
唯一、コースの常連の一人に熱烈にプロポーズされた時には、困った。
あからさまな好意の表現はコースのメンバー達の評判になってしまったし、いつも同じ組になろうと言うのを無理に断ることも出来なかったので、1年ほど「何時二人は結婚するのか」と賭けの対照にされたりもした。
こちらには公務員を辞めてまで結婚するつもりは全くなかったので、あくまで断り通した結果...彼のコースからの退会でその話題は自然消滅した。

...今では私には、「クールな女」と言う評判が定着している。
確かに、毎週土・日の2日間コースに必ず来て、ショットの結果に関わらずゴルフを楽しもうとしている私は、普通の女性ゴルファーのように喜怒哀楽を大袈裟に表に出してはいない。
でも、本当はどのホールだって、ボールをティーアップする時とボールをマークしてラインを読もうとする時、心の底から熱いものがこみ上げて来て「飛ばしてやる!」「絶対に入れてやる!」と本気で獰猛な目つきをしているんだけど。
そうして、その時の自分が本当の自分だと思っている...)


...それがわかってくれて、仕事をやめないで済むのなら、そういう男性と結婚してもいいとTさんは思っている。
ただ、もう40を過ぎたTさんだけれど、今の生活を変えるつもりは全くない。