ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

今日は今日とて

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今日来た郵便物の中に、ちょっと変わった包装のものが一つ。
「なんだ、これ?」と手に取れば、「おお、これが噂のアベノマスク!!」。

届いた人の話は聞いてはいたけど、ウチには全く来る気配も無く...ついでに言えば、もうあちこちで「振り込まれている」とかいう大金の噂もカケラも無く...
「ウチは世間に忘れられているんだろうね」なんて、独り言の日々だった。

「そうか、忘れられてはいなかったんだ」なんてニヤニヤ顔で言いながら、包装を開けてみると...ネット上じゃ「小さい」とか「いや、普通の大きさだ」とか、「汚れている」とか、「虫が入っている」とか、様々な感想を見かけて来たけど...ウチに来た奴は「綺麗」「虫は入っていない」「小さい」モノだった。
俺の顔には全然小さいが、うちの奥さんや娘は使えそうだ。


このマスク、世間の評価は良くはない。

マスコミの報道では、「大金使って、役にも立たない世界の笑い者のヘンテコ対策の代表」という事になっている。
確かにこの政策発表当時の世間の感じ方は、「新薬開発や医療崩壊、検査の遅れや登校自粛、様々な業界への自粛要請や休業要請」なんて対策が喧々諤々と論じられていた時期の、すぐに実行した対策というのが「マスク2枚」というのだから、「馬鹿馬鹿しい」とか「マンガだろ」とか「何考えてんだ」「恥ずかしい」なんてのが大多数だった。
以降、時の首相の肺炎対策をバカにする代表的な例となった訳だが...俺の考えは少し違う。

当時、マスクの買占めが横行し、一般の人間にはマスクを手に入れるにはネットなどで元の値段の10倍以上のものを買うしかなかった。
政府が何億枚作らせようが、生産工場の殆どは中国にあるため、日本のメーカーがいくら増産して作っても、中国政府が国から持ち出すのをストップさせてしまい、日本に来るマスクが増えることはなかった。
買い占めた連中の売値はどんどん上がり、手持ちの無い人は20倍、30倍の値段でも買うしかなかった状態が続いていた。
そこで転売を禁止した法律を作ったりしても、そうした悪質な連中は手を替え品を替え汚い商売をし続けていた。

そんな時にたった2枚のマスクでも、「布製」で「何度も洗えるマスク」を国が国民全員に配布するということは、マスコミがいくらバカにしても一般の人に与えた影響は大きかった。
「布製で作ればいいんだ」
「使い捨てが全てじゃ無いんだ」
「何度も洗って使えるやつを自分でも作ればいいんだ」
「ボッタクリ値段で使い捨てを買わなくてもいいんだ」
という雰囲気はすぐに大きく広がった。
「布製のマスク」で「それでいいんだ」と言う事が国民に認識された(昔はみんなそうだったのだが、最近は化学繊維を使った中国製の低価格使い捨てマスクしか選択肢がなかった)。
繊維関係、ファッション関係の日本国内のメーカーもマスクを作り始めた。
洗って何度も使えるんなら、使い捨てマスクのような「特別安い」価格設定にしなくても、一般の人は買うと言う雰囲気になった。
中国政府の勝手な都合で自分たちが作った製品を輸入出来ないなんて理不尽さと、「もう中国で作る使い捨てマスクは安くはならない」という事が知れ渡った。
そこにWTOのあの「無能の人」が、やっと「マスクは有効」とか言い出したから(これもダブつき出した中国製のマスクを高く売るため?)、世界規模でマスクの需要は増えるだろう。
今まで50個入り五百円で買えたマスクは、多分千円以下にはならない。
ならば、もっと洒落ていて何回も使えて衛生面や仕上がりも納得できる「布マスクの方がいいんじゃないか?」という事が日本の常識になりつつある。

今値崩れを起こしている中国製のマスクを、再び手に取っている人は少ない。
他の国々で「検査不合格」とされて中国に戻されたマスクも多いという噂だし、「国産なら、倍の値段でも買う」という人も多い。

今になって考えてみると、こうした一連の全ての流れが、あの落胆と嘲笑の的だった「アベノマスク」から始まったような気がするのだが。
...結構このマスク政策、隠れた「いい手」だったんじゃないか?

 

ちなみにウチでは俺と娘が毎年酷い花粉症に悩まされていたので、春先までには普通サイズと小さいサイズをそれぞれ4箱ずつくらい買い置いて準備していた。
そして、うちの奥さんの病気のためにゴルフに行く事が無かったので、マスクはそれ以上買い足さずに今まで来れた。


ずっと店頭になかったマスクも、最近になって見かけるようになって来た。
2500円から始まってすぐに1250円、最近は1000円くらいだと言うし、100円ショップのダイソーでは普通に3枚100円で売っているようになった(ただし、どれも「中国製」となっているので、まだ自分では手を出してはいない)。

季節柄、外を歩く時には暑くてマスクをしない事が多くなったが、どこかの店に入る時には「マスク着用」と言うのが常識になっている。
今後は花粉症の為だけでなく、そうした「新しい常識」の部分でマスクは必要になる。
アベノマスクは俺には使えないが、今後は通年使えるきちんとした「布マスク」を秋までに用意しておいたほうがよさそうだ。

...「やっと来た」小さなアベノマスクは、改めてそんなことを考えさせた。