ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

2015年全英オープン 最終日

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最終日...4日目じゃなくて5日目だし、最終ホールの最後のパットでも優勝が決まらない大混戦の上、3人による4ホールのプレーオフ...今年の全英は見ていて疲れる試合だった。

例年と違う止まりやすいグリーンだとこんなにスコアが出るものなんだ....いつもの全英オープンはピンそばに落ちたボールはみんな跳ねてグリーンからこぼれてしまい、遥か手前から転がってピンに寄せる球をどうやって打つかが見所だった。
それが今年はピンそばに落ちたボールはバックスピンがかかって止まる....それどころかバックスピンがかかり過ぎて戻ってトラブルになってしまうシーンがあちこちで見られた。

ザック・ジョンソン...そんなグリーンだったから勝てたんだと思う。
彼はB・ワトソンやヒューリックと並んで遥か遠くからでもスイングを見ただけで彼と判る個性的なスイングの持ち主で、今時珍しいパンチショット(強烈なフックグリップなのでハンマー打法とも言える)でのアイアンショットの名手だ。
そのスイングは奇麗なフィニッシュなどとらず、インパクトが全てのフックボール打ち。
しかし、猛烈な練習量あってこその正確さではあると思うが、プレーオフでは二人の飛ばし屋にティーショットで20ヤード以上離されながらも、二人より先にずっとピンに絡む球を打ち続けて、4ホールで2バーディーを奪った。
(一番先にセカンドを打つけれども、一番最後にパットを打つ....これってゴルファーとして最高に格好良いと思う。)
彼の様なハンマー打法やパンチショット使い、「自分のやりたいゴルフスタイルに合う変則スイング」の使い手を目指す方が、誰もが同じ「合理的で美しい」スイングを目指すよりも、やっても見ていてももっと楽しいんじゃないか?...Z・ジョンソンのゴルフを見ていて心底そう思う。

ウーストヘイゼンは、5年前にいきなり全英に勝った時には全く知らないゴルファーだった。
その時は何もかもが上手く行って結果としてブッチギリで全英オープンのタイトルを獲った訳だが、「メジャーのタイトルを出会い頭でいきなり獲るなんておかしい」という思いがあって、ウーストヘイゼンと言う小柄な前歯に隙間のあるゴルファーを「まだメジャーを獲っちゃいけないゴルファー」と認めていなかったのを覚えている。
しかし、今回の全英での彼のゴルフを見ていると、その無駄に力の入っていないスムーズな動きとリズムに思わず見とれた....強く振ったと見えないのにヘッドがいつも同じように走るドライバー・まるでショートアイアンの様に振るロングアイアン・アプローチのようなリズムと力感のショートアイアン・距離を決め打ちする時のウェッジのインパクトの実に乾いた奇麗な音!
彼のスイングは参考になる事が一杯だ。
改めて、彼が世界を代表するゴルフの名手である事を認めて、自分に見る目が無かった事を恥じる事にする。

歴史を作るかと思えたスピースも、敗れはしたが結果として見事なゴルフをした。
何のかのと言っても、(結局わずか一打差でプレーオフに参加出来なかったが)彼が優勝争いにずっと加わっていたと言うのは凄い事実。
期待していたD・ジョンソンがいつも通り脆く崩れて結局4アンダーまで落ちたのに比べて、スピースのしぶとい粘りと強さは本物の本物と言える。

レイシュマンは、まだ、と思う。

今回はスピースやガルシアやデイ、あるいは久しぶりのアマチュア優勝だったらもっと盛り上がったかもしれない。
しかし、Z・ジョンソンの優勝はそれほど「外れ」じゃないだろう。
飛ばし屋全盛時代にアイアンの正確さを、それも(時代遅れと言われる)パンチショットの使い手がその切れ味で優勝したと言う事は、言わば「大学ゴルフ」全盛の今の若手の優雅なスイングに「個性的な変則スイング」でやり通す素晴らしさを示したとも言える。
小柄で飛ばせない男のアイアンショットの勝利...実に格好良くて、今は「今回の全英オープンはZ・ジョンソンの優勝で良かった」と思っている。


このザックのスイング、ある意味「昭和のゴルフ」って言えるかな...