ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

クラブがインパクトゾーンにある間...

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「クラブがインパクトゾーンにある間、顔の左側面が動かなければ競技ゴルファーになれる」...ベン・ホーガン。
ベン・ホーガンは、ツアー64勝・メジャー9勝のゴルフ史上に残る大選手。
「謹厳」・「厳格」・「生真面目」・「実直」などの評価の他に「冷酷」・「酷薄」「人嫌い」などの評価も残る。
スイングのメカニックを追求して、スイング理論の定番として現代にも評価される「モダンゴルフ」を残す。

さて、この言葉...要するに昔から伝わる「ステイ ビハインド ザ ボール」を判りやすく言った言葉だが...近年デビッド・デュバルやアニカ・ソレンスタムの「あっち向いてホイ」打法が一時代を作った事で、余り言われる事が少なくなった。
しかし、現代のボールストライカーとして評価される様なプロは、例外無くインパクト時に顔の左側は動いていない。
結局左側を動かしても正確なボールを打てたのは、全盛期のデュバルとソレンスタム以外にはいないのだから、彼等のスイングが特殊なものだったという事だろう。
むしろ最近活躍しているプロを見ていると、昔よりかえって頭を動かさずにスイングする人が多くなったように見える。
年をとってもレギュラーで活躍しているヒメネスの様に、スイング中頭が微動もしないゴルファーの方が長持ちする様な気がする程だ。
(余談だけど...今のプロゴルファーで、一番頭が動くのはタイガー・ウッズだと思う(上下動だけど)。)

パーシモンの時代には、少し年をとって飛ばなくなると回転の力だけでは弱いと感じて、身体を揺さぶりながら打つスイングの人が多くなった。
パーシモンヘッドに鉄のシャフトでは、そうでもしないと本当に飛ばなかったのだ。
それがヘッドの素材がかわり、シャフトにバリエーションが増え、年寄りも道具の力に助けられて若い人にそれほど飛距離で負ける事が無いようになって来た。
そうなると、身体を揺さぶったり腕力を無理に使わずに、インパクトゾーンでステイビハインドザボールが出来ていればきちんとボールとヘッドをミート出来て、パーシモン時代よりずっと飛ぶようになった。
結局「ステイビハインドザボール」は、今も昔もゴルフスイングの一番のポイントでありツボでありコツなのだ。

ただし、打った後でいつまでも意識的に頭を(顔の左側面を)残そうとしすぎると、軽い「鞭打ち症」になる可能性が高いので要注意。
特に思い切り振った時なんて、絶対に頭を残し過ぎちゃいけない。
あくまでも「インパクトゾーンの間」だけだ。
右肩がアゴに触ったら、もう頭を動かしても大丈夫だから。

...このベン・ホーガンの「モダンゴルフ」を自分のゴルフスイングのバイブルとする人は、プロ・アマ問わず非常に多い。
しかし、気をつけて欲しいのはこの本の基本は「酷いフックを打たないスイングの方法」にある事だ。
この本は「完璧主義者」とも「完全主義者」ともいわれた生来のフック打ちのホーガンが、「いかにして完璧なフェードボールを打てるようなったか」を書いた本なのだ。
勿論基本的なスイング理論は間違ってはいない...どころか、今の時代のスイング理論の基本になっていると言える。
しかし、この本はほとんどのスライサーにとっては、あまり役に立たないし危険でもある。
多くのプロやレッスンプロが本当に上手くはスライスに悩む素人ゴルファーを救う事が出来ないのは、彼等がゴルフを始めたのが子供の頃なので「一度もスライスを打った事が無い」からなのだ。
だから彼等はここ一番で出るコントロール出来ないフックに悩む事があっても、右の池を怖がるスライサーの気持ちは判らない。
ベン・ホーガンも同じ。
彼にとって生涯の問題は、危険なフックから安全なフェードへのスイング改造だった...と言う事を前提に「モダンゴルフ」は読まなくてはいけない。

しかし...私のように右にも左にも曲る「ワイパーショット」を打つ人は、頭の構造か性格の捻れがボールの球筋に出てると言う事で...つける薬は無い。