ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

不器用

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Tさんは、運動が小さい時から得意ではなかった。
かけっこも遅い。
野球やバスケットボールも卓球などの球技も、ボールの大小に関わらず一切苦手。
もちろん柔道や相撲などの格闘技もダメ。

そのために40の声を聞くまでは、あらゆる「運動」と名のつくものから距離をとってきた。

それが、取引先との関係で「やらなければならない」状態から、ゴルフを始める事になってしまった。
当然苦手な運動との自覚があるから、一番はじめから近所の練習場のレッスンプロに教えてもらう事に決めた。
道具の選び方から、グリップ、アドレスの姿勢から...すべて手取り足取りのレッスンを始めた。
それから5年、週1回の練習は欠かさず、必ず練習場のプロにチェックを受けている。
...が、スコアははじめのうちこそ、ハーフ70や80から少なくなってきたが、ハーフ60の壁を越える事ができない。
トータル120を切れない。

Tさん自身は、その原因が分かっているつもりだ。

Tさんのゴルフは、ドライバーの調子が良いと他のアイアンやパターの調子が悪い。
アイアンが調子が良いと、ドライバーが当たらず、パットは相変わらず悪い。
パットを練習して、調子が良くなると、ドライバ-もアイアンも当たらない。
・・・

プロはいつも「ドライバーもアイアンもスイングは一緒ですから..」と言う。
でも、Tさんはこれは絶対に違うと思う。
「だって、ドライバーが調子いいから、ドライバーと同じようにアイアンを打つと当たらない」
「アイアンが調子いいからと思って、同じようにドライバーを打つと当たらない」
「なんで、ゴルフってドライバーもアイアンも、アプローチも、バンカーも、パットも、みんな打ち方が違うんだろ?...なんでみんな、こんなにいろいろな打ち方の違うものをちゃんと打てるんだろ?」

プロは、「打つ基本は一緒なんですよ。ボールの位置と重心と、ほんのちょっとしたイメージの持ち方でちゃんと打てますから」なんて言うんだが、それがよく理解できない。
だって、ゴルフってその度にみんな打つ場所や条件が違うんだから...
教わった事の無いところにばかりボールは行くし...

「あのう、お願いですから私の言う事をわかってください」なんて、コーチに泣かれてしまった。
確かに、5年もやっていてこんな風なのは私だけらしい。
一緒にゴルフをする仲間や先輩達には、「不器用にも、程度ってものがあるだろ?」なん笑われるし。

だけど、自分はゴルフが嫌いな訳じゃない。
今日は何が調子がいいのか楽しみでもあるし、他の調子の悪いものだってそれがつらいものでもない。
スコアに対する期待は全然しないけど、ゴルフの予定が決まってからは、ずっと気持ちが浮き浮きしているのも不思議なものだ。
多分これは他のスポーツと違って、下手だって馬鹿にされたり邪魔者扱いされて、辞めさせられてのけ者にされる、なんて事がゴルフでは無いからだろう。

だって、5年もプロから教わっていて、「プレーを速く、ボールに触らない、ルールを勉強する」という事はちゃんと出来るようになってるんだから。
...それにしても、どうしてみんなはドライバーもアイアンも、アプローチもバンカーも、おまけにパットまでちゃんと出来るんだろう。
自分はそのうちの一つしか、一度に出来ないっていうのに...