ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ああ、ゴルファー

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複雑なグリーンの傾斜を読んで、それぞれに自分のラインを決めかねている時に、遠くで女の叫ぶ声が聞こえた。
我々はみんな、どこかのキャディーが何かを言っているんだろうぐらいに感じて聞き流していた。

そして自分のラインが決まったBさんが、カラー近くの場所からロングパットを打とうとした瞬間「わっ!」と言ってのけぞった。
皆が「え?」と思って振り向くと...なんとすぐそばに赤い帽子の老ゴルファーが立っている。
我々4人がどう反応していいか判らずに固まってしまっていると、その老ゴルファーはそんなことを構わずにグリーン周りをきょろきょろと見ながら歩いている。

その時になって、やっと後ろのキャディーが誰かの名前を必死に呼んでいるんだということが判った。
こっちを向いて必死に「XXさ~ん!」と叫んでいる。
ふと見ると、もう一人トボトボと歩いてくる老ゴルファーの姿も...

キャディーは思いっきりの声で
「XXさ~~~ん、ボールはこっちですよ~~!」
「00さ~~ん、00さんのもこっちにありますよ~」
どうも二人はボールがグリーン近くまで来て、見当たらないと思っているらしい。

こっちの4人もパットする気にもなれなくなって、近くにいる老ゴルファーに「ボールは後ろだって言ってますよ。」と声をかけた。
が、チラッとこっちを見ただけで、依然としてボールを探している。
別の人が「キャディーさんが読んでますよ」と声をかけたけど、反応がない。
「声が聞こえていないのかな」「耳が遠いんじゃないか?」
というので、今度は大きな声で「キャディーさんが呼んでますよ!」
...反応がない。
今度は口に手を当てて「ボールはあっちだって言ってますよ~!」
...ダメ(汗)。
今度は4人でてんでに大きな声と指差して「あっち!あっち!」
「後ろにボールがあるんだって!」
「キャディーさんが呼んでるよ!」
「こっちじゃないって!」
...指差した方を見て、やっと後ろを振り返ってくれた...

グリーン上の4人は気が抜けて、全員ボギー...「なんだかねえ...」

プレー後、風呂場で湯上がりに身体を拭いていると
「こっち!こっち!こっち!こっち!こっち!こっち!....」
延々と壊れた時計のように「コッチコッチ」と呼び続ける声がする。
そっちを見ていると先ほどの老ゴルファーが...
その前を人影が脇目も振らずによたよたと通り過ぎる。
「そっちじゃない!こっち!こっち!こっち!こっち!..」
やっと人影が戻って来て、脱衣場に入って来た。
ちょっと聞こえた話では二人とも90前後で、一人は耳が遠く、一人はちょっと認知症の気があるようだ。

しかし・・・
90前後で、二人でゴルフをする...ゴルフが出来る...ゴルフを楽しむ。
なんと言う世界だろう。
二人のプレーは、ツーサムながら、フォーサムの我々にしっかりと着いて来て、ラウンドを楽しんでいた。