ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

あちら側とこちら側の話..続き

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広野ゴルフ倶楽部、というコースがあるのを知っているだろう。
ゴルフを始めた頃に、よく人が「広野を見てから...」というのを耳にした。
いろいろなコースの「レイアウトが」とか「難しい」「易しい」「長い」「短い」「トリッキー」「正統派」...なんにしろ、コースを評価する基準は広野ゴルフ倶楽部が基準になっているという。

しかし、その広野ゴルフ倶楽部というのは、まず我々がプレーすることは不可能なコース。

自分にも以前に一度だけ、広野でプレーできるかもしれない、というチャンスがあった。
ゴルフをはじめて3~4年経ったときだったろうか、六本木に事務所を持つある広告代理店の社長とゴルフの話をするようになった。
仕事の合間に、スイングの話やらコースの話やら...そんな時に「広野でプレーしたことがないと、コースの評価は出来ないそうですねえ」なんて話をしたら、「何だ、広野でやりたいの?」「俺メンバーだから今度つれてってやるよ」「え!本当ですか?」「ぜひお願いします」
少し経って、「来週の金曜日にいくから一緒に行くか?」「はい!ぜひお願いします!」
...帰ってから、奥さんにも話して多分高いだろうプレーフィーとか、日帰りはとても無理だからホテル代とか飛行機代とか...貯金を下ろしてなけなしの金を用意して、バッグはいつ送った方がいいのか、それとも飛行機に荷物として積み込むのか、とか...
大騒ぎして用意を終えた。
そして詳しい情報を聞くために、その次の日に事務所を訪ねた。
スタート時間とか、いくらくらいかかるのか、服装は、気をつけることは...等々。
話が進んでお礼を言って帰ろうとした時に、社長が訪ねた。
「渡辺君、ハンデいくつくらいなの?」
下手なの連れて行って他のメンバーに文句言われたくないんだろうと思って
「あの、オフィシャルハンデは9になりました」と言った...
とたんに「何!シングルなのか!」
「あーこの話なしだ!」「え?」
「シングルなんかとやったら俺が馬鹿にされるじゃないか!」
「なし!なし!この話はおしまい」
それで終わり。
その事務所の仕事は、それ以来やっていない...もう20年くらい前の話だけれど。

広野でプレーすることは死ぬまでないだろう。
誘われても行く気にはもうならない(意地だけど)。
だから、俺にはコースを測る基準がないということらしい。

それが一例。
あちら側から出されるゴルフ本の数々には、あちらの優雅なエピソードの数々が、「これこそがゴルフライフだ」みたいな形で紹介される。
彼らは紳士で騎士で、生活の心配などないロマンチスト...ゴルファーってのはこうでなくちゃいけないよ、って教えてくれている。

でもね、俺の周りにはそんな人は一人もいない。
みんな生活に懸命で、やっと作った時間となけなしの金で潔くゴルフ場に遊んでいる。
だから上から目線で俺たちを指導してやろう、なんて思わないでほしい。
ゴルフのマナー本やゴルフライフ本の何か感じるうさんくささは、我々とは全く関係ないあちら側のことを「常識」として「指導してくれている」点にある、と俺は思っている。