ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

光と影

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「ゴルフ場が一番美しい時間は、何時なんだろう?」
そんな話題を、あるプロカメラマンと話したことがある。

晴れた日、風の日、雨の降った日...春、夏、秋、冬...海の側、山の中、林間コース、リンクスのコース...
それぞれにコースは美しいのだけれど、意見が一致したのは...「プレーヤーのいない時間」。

ゴルフコースは季節にもよるけれど、朝は7時過ぎから、夕方はだいたい4時頃までがゴルファーがプレーしている時間(もちろん、ナイター営業なんて特別なものは除いて)。
それなのに、コースが一番美しい姿を現すのがそれ以外の時間、というのはなんて皮肉な話だろう。

カメラマンの彼が一番狙うのは(好きなのは)、コースがまだ目覚める前のようなやっと日が上がりかけた時間だという。
薄く靄が立ちこめる中で、徐々に姿を現してくる自然の中に作られたコースの造形...そんな時間が一番好きでシャッターを切るんだと。
確かに彼の写真には、そんな時間からプレーヤーがスタートする前までの、スタッフの色々な作業の姿や風景が美しく捉えられている。

「プレーヤーのいない時間」が美しいという意見に賛成した俺が好きなのは、プレーヤーがラウンドを終えて誰もいなくなったコースに、沈む太陽が長く影を落としているひっそりとした時間。
朝のプレーヤーがスタートする前の時間が、徐々に光を増す風景の中で、眠りから目覚めてこれからの華やかさを予感させる「動」のイメージなのに対して、誰もいなくなった夕方は、落ちて行く太陽が木々の影をコースに刻んで、戦い終わってこれから眠りにつく前の一瞬の輝きを見せる「静」の時間のイメージ。

悠久の自然の時間の移ろいと、ほんのわずかな時間に人工的に作られたゴルフコースの姿が、一瞬、遙かな昔からそこに存在してきたもののように「時間を超えた」光と影の世界を作る。
その「時」が好きだ。

とてもゴルフのプレーは出来ない時間だけど、その光景はゴルフコースでしか見られない。
葉の落ちた冬の木立の季節が、特に美しい。