ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

飴をくれる人

 

少し前にネットで一人参加のゴルフラウンドに行った時の話。
私の組は一人参加の人ばかりが4人集まった組だった。
前の組は仲間同士で参加しているスリーサム、後ろも仲間同士らしいフォーサムで、順番としてはちょうど良い。
一緒になったのは、同じ歳くらいのシニアの親父と60歳くらいのシニアに、50歳くらいの地味目のご婦人...こうした年齢の女性に多い派手なゴルフウェアではなく、どこまでも地味な感じがするウェアで、クラブも最新のものではない。
経験上こうした服装の女性は意外に上級者が多いので、「ヤバイかな?」なんて、ちょっと緊張(笑)。

挨拶を終えると、その女性は小さなビニールの袋を一人一人に差し出した...「こんなものですがいかがでしょうか?」。
見ると飴が3個入っている。
パイン飴と黒糖飴とミント飴...「ハハ、考えてるな」と思わず笑ってしまう。

ずっと以前にも一回だけ同じように飴をくれる女性と一緒になったことがある。
独学でスイングは個性的だったが、一生懸命さと楽しそうな様子が印象的な女性だった。
今回の「飴をくれる女性」は、始めた時に練習場のゴルフ教室でレッスンプロに教わったとかで、それほどクセのないスイングをしていた。
しかし、腕は100を切れない程度で、同伴競技者に迷惑をかけないよう意識するためか「早く打つ」という意識がいつも見られて、なんとも微笑ましいプレーぶりだった。

私は同伴競技者の女性から「飴をもらう」...いや、同伴競技者の女性が「飴を配る」という行為を経験した事があったので、「ありがとうございます」とすんなり受け取ったが、同伴のシニアのおっさんは意味がわからずに赤くなって慌てて、「いや、自分は要りません!」と遠慮して断る。
受け取ってもらえない女性も、どうして良いかわからなくなってモジモジしている。
「今日1日よろしくお願いしますっていうご挨拶がわりだから、もらえば?」と私が囁いて、ようやく事態が進展(笑)。


前に飴をもらった時にその女性に聞いた話だと、どうしても男性の中には女性と同じ組になると「プレーが遅れる」とか「リズムが乱れる」とかで嫌な顔をする者がいるらしい。
それでプレーに気をつけるのはもちろんだけど、飴を渡すことをきっかけに会話をして楽しくゴルフをする雰囲気になって欲しいのだとか。
男でも「自分は沢山叩くから同伴の人に迷惑をかけるんじゃないか?」という気持ちがあって、なかなか一人参加に踏み切れない人が多いと言うから、女性だとなおさらその壁は厚く高いんじゃないだろうか...


その女性は、まだミスが多い...が、ミスをして悲鳴を上げたり思わせぶりなアクションをする事も無く、黙って急いで次のショットに入るし、ルールもよく勉強しているようだった。
...ただ、急ぎ過ぎて次打を打つ人より前に行ってしまって注意される事はあったけど。
あまり個人的な話はする時間は無かったが、一人参加のゴルフの「第一申込者の女性はグリーンフィ無料」とか、「スタンプを集めたら割引」とかのサービスを利用して参加している事、それに今はゴルフをすることがいちばんの生きがいになっている事、そしてもっと上手くなりたいと思っている事などを聞く事が出来た。
,,,派手で華やかな格好をする気は全く無く、クラブの買い替えも中古クラブで欲しいものを揃えるとかも。

飴をもらうのにドタバタしたシニアのおっさんは、ラウンド中は丁寧に親切に色々なことを彼女に教えていた。

彼女のくれた飴は、疲れた時には黒糖飴、気分を変えたい時にはパイン飴、気合いを入れる時にはミント飴、と嘗めるタイミングを合わせてその日のゴルフの役に立った。

飴を配る彼女の一人ゴルフ、詳しい事情は分からないけどそのゴルフが良い時間の積み重ねになればいいな...と切に思う。