ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

今が人生の...

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ずっと以前、お台場の「船の科学館」に南極観測船「宗谷」を見に行った時の話。
ほぼ南極観測に行った時の状態を再現している船内の様子は、(実は俺の憧れだったため)何時間見ていても飽きなかった。
そうした中でも、当時の普通の隊員たちの居住区は、ベッドも小さく狭く2段ベッドで4人部屋が基本だったらしい。
見学では「これ以上入ってはいけない」という意味のロープが張ってあって、我々はそのロープの外側から室内を覗くだけなのだが...ある船室の前に来た時に、後ろから来た老人が当たり前のようにロープを跨いでその室内に入って行こうとした。
「そこは入っちゃいけないんですよ」というと、その老人は「あ、実は私若い時に自衛隊でこの船の乗組員になって、この部屋で南極まで行って来たんです。」
「私の人生で一番充実して光り輝いた時でした。」
「なので、時々ここに来てちょっと時間を過ごさせてもらっているんです。」
「どうか、見逃してください。」

それを聞いて何も言わずにいたら、その人はそっと部屋に入り(多分自分が使ったであろう)ベッドにそっと触れて目をつぶった。
「あの時は楽しかった...」

その言葉を最後に聞いた。


きっと誰にでもある、自分の人生の一番輝いた時....その時の思いは一生忘れない本人の宝物なんだろう。

 

大谷翔平が、先発ピッチャー兼DHの一番バッターとして、アメリカ大リーグのオールスター戦に出場した。
先発では1回をノーヒット無失点、打席は2打席ノーヒットで終わった。

こうした形でのオールスター出場というのが、それでなくても初めて尽くしの記録だったので、結果は満足できるものでは無かっただろうけれど、今日が彼の人生で一番輝いた一瞬だという事は、長い時間を生きたジジーにはわかるのだ。
この後彼はまだまだ活躍して記録を塗り替えていくと思うけれど、どんなにこの後成功を重ねて有名になろうと成功しようと、きっと彼の記憶で一番輝くのは今日の記憶だろうと俺は思う。

当人が「まさにこの日が自分の一番光り輝いた一瞬だった」と感じるのは、あと数十年先になるかもしれないが、俺は類稀な才能を持った人物の「その日」に立ち会えたことを感じて感無量になる。

 

...そうして人生は過ぎて行く。

もう7月も半ばになる。