ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

クリスマスイブの出来事  (2016年12月25日)

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それはクリスマスイブの昼下がり。
散歩に出ようとした時の出来事。

遠くから子供の声の様な、あるいは犬の泣き声の様な声が聞こえる。
それは途切れる事無く、続いている。

何か切迫した助けを求める様な雰囲気があり、気になって声のする方に近付いてみると、だんだんはっきりと犬の悲鳴の様な鳴き声だと判って来た。
キュイーンとかキャイ~ンとか、犬を飼った事の無い自分にも、それが非常に必死の犬の助けを呼ぶ声だとは判る。
だがどこから声がしているのか判らない。

あっちへ行ったりこっちへ行ったり....やっとそれが、地下に埋められた排水路の大きな土管の中から聞こえるのが判る。
しかし、犬がそこにどうして入ったのか...

排水ポンプの側の金属で蓋をされた隙間から覗いてみるがよくわからない。
排水路に下りる足場を見つけたので金属の蓋を開けて中をのぞいてみると、ちょっと深めに水がたまっていて、犬の泣き声のする方が暗くてよく判らない。
しかし、犬の鳴き声は非常に切迫して切れ目無く聞こえていて、非常に緊急な事態だと言う事は感じられる。

かなり深い水の中に入って、暗い中で犬を見つけると言うのは、ちょっと素人の手には負えない。
心配したうちの奥さんが市役所に電話すると、市役所では「それはうちでは処理出来ないので、消防署に連絡してくれ」との事。
教えられた番号に電話して事態を説明すると、近所の消防署のレスキュー隊が大きな赤い消防車で来てくれたそうだ。
その頃になると近所の奥樣方や、パトカーまでも来て、一大救出作戦が実行された。
結構深い水の中、レスキューの方々が助け出したのは、首輪をはめた老犬とも言える茶色い雑種の犬。
逃げもせずに大人しくしてくれていたので、救出は楽だったそうだ。

しかし助けられた犬は、それ迄あれだけ泣き続けていたのに、救出された瞬間に意識がもうろうとして動かなくなってしまった。
長い時間水の中に居た為か、身体が氷のように冷たくなっていたそうだ。
そこで集まった奥樣方が、ペットボトルに温水を入れたのを何本も持って来て必死の介護...しかし、明らかに衰弱が酷い状態なので、近所で一番動物に優しいと言う評判の動物病院に電話して、緊急に診てもらう事に。
その際にはパトカーが病院迄の送り迎えをしてくれた。
病院では、すぐに点滴をして、身体の状態を調べていたそうだが...何とその獣医さんが「あれ? この手術跡は見覚えがある...私が手術した犬だ!」

すぐにその犬の飼い主に電話すると、「昨日の晩から居なくなったので、探していました」と。

普段は全く吠えたり鳴いたりしない静かな犬なので、そんなに泣いたのは本当に命の危険が迫っていたからではないか...と。
人に飼われていた犬だから、助けられた途端にホッとして意識がなくなってしまったのではないか...人の手が触れて安心したんだろうと言う。
(猫しか飼った事の無い身には、それほど犬と言うものが人に近く、人に依存して暮らしている事が不思議な気がする)

16歳と言う老犬で、回復しつつあるけどまだ入院したままの状態だと言うが、あのまま力尽きないで良かった...
集まった奥樣方も、第一発見者のうちの奥さんも、「よかった...助かって良かった」との共通の思いで安心してみんな笑顔で一杯になったとか。

飼い主の方が今朝、この救出劇に関わった奥樣方の家を訪れて、感謝してくれた。
「ああ、良かった。」
そんな気持ちでクリスマスの今日を迎えられるのは、最高のクリスマスプレゼントだったのかもしれない。