ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

運命の出会い

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まあ、大げさなんだけど。

日曜日のN氏のSLDRドライバーを打った時の感想だ。
これは純粋な飛距離の問題ではなく、「自分がああいう風に振った時にはこういう風な球になって欲しい」というぼんやりとした感覚にぴったりあったショットだったから。
最近はそういう風になったボールは一球も無かった。
何年間イメージに合わないと思いながらドライバーを振り続けて来た事だろう。
確信しているのは、そういう球が打てたのはあの一本のSLDRドライバーだったから...全く同じスペックのSLDRを買って来て打ってみても、絶対にああならないと思う。

これまで30年くらいのゴルフの仕事の間に、そういう事を何度も見て来た。
現代のゴルフ用品用具関係の常識では、クラブと言うものは使う人のデータを徹底的に取って、本人の希望する球筋になる様なスペックのものを選べば、それぞれのゴルファーにベストのドライバーを選ぶ事が出来ると言われている。
確かに、昔の「あのプロが使っているから」「ライバルが使っているから」なんて動機でドライバーを選んでいた時代に比べると、今はそれぞれに無理の無い間違いの無いドライバーを選ぶ事は出来る。
だから、「全く合わない」なんて事もなく安心して新品の高額なドライバーを買う事が出来るようにはなったけど...
それと自分にとって最高のドライバーに出会うってことは関係がない、と言うのが自分の感想だ。

こんな話がいくつもある。
あるゴルフ雑誌の編集長が当時大人気だったドライバーのメーカーに取材に行って、取材後に彼に合っているというドライバーを一本贈呈された。
そのドライバーを使ってみると、彼の飛距離はその前より50ヤード以上飛ぶようになった。
一緒にまわるといつも50ヤード以上後ろにいたのに、そのドライバーを使い出してからは殆ど同じ所まで飛んでくる。
彼の体格やヘッドスピードから言ってそれは信じられない事だったが、本人は「これは実に気持ち良く振れるんだ」。
しかし、ずっとそのドライバーを使い続けているうちにヘッドが割れてしまった。
そこで彼は中古ゴルフショップに行き、全く同じスペックのドライバーを手に入れて来て使ってみた...結果は50ヤードくらい飛ばない。
おかしいと思って同じスペックのものを何本も買い替えてみたが、どれも結果は同じだった。
(この例は、彼に送られたものが本当に「特別製」だったからかも、とも言えるけど)

もう一つは、今や飛ばし屋仲間でナンバー1に君臨しているM氏の話。
その体格や背筋力やセンスから「飛ばす」という評判は聞いていたけど、N氏とも一緒にまわり始めた頃は私やN氏のカモであった。
M氏は用品用具関係でゴルフ業界と関係している為に、データを採ってとっかえひっかえクラブを作ったり組み上げたりしていたが、曲がりが酷く、当たっても我々より飛ぶ球は出ずにいつも悩んでいた。
それが数年前のある日、当時私が使っていたミズノのMP425、白マナ73X、8・5度のドライバーを、本人は嫌がっているのに無理に打たせてみた。
その嫌々振った一発は、変な風にぐらぐら揺れながら飛んで行き、それまでいつも20~30ヤード置いて行かれたN氏のボールをキャリーで超えていった!
打った本人も見ていた我々も「え? ウソだろ?」...変な飛び方で、決して勢いああるようには見えないボールなのに、いつまでも落ちて来ない。
その後は、もうM氏はそのドライバーを絶対に手放さず、結局そのままドライバー交換となった(私にはちょっとチーピンが多いドライバーだった)。
彼はしばらくそのドライバーを本当に抱いて寝たらしいが...他のどんなドライバーを振ってもそのドライバーで打った様な球は出ないのでちょっと不安になり、ヘッドもシャフトも全く同じ奴を何本も作ったという。
しかし、その新しく作ったドライバーの数値をいくら同じように合わせても、決して同じように気持ち良く飛ぶドライバーは出来なかったそうだ。
彼の所には精密にデータを取れる機器はあるんだけど、どんなにデータを同じようにしても振り心地や飛びは同じにならない..その為に、彼のドライバーには今でも私が貼付けた鉛などが一切手をくわえられずについている(笑)。

・・・思うのだが、人間があんな不自然な道具を振り回す時には、どんな機器で計った細かいデータでも採れない複雑な動きをするんじゃないか...それに気持ちが加わるから、ますますその動きは精妙かつ複雑になり、そこで「気持ち良く」振れて一番その人のパワーを伝える動き・軌道をピッタリ走る様なドライバーに出会う事は本当に奇跡なんじゃないか?
それを使うと、自分の一番いい動きが自然に出来て、無理無く振られた道具は最高のパフォーマンスを見せる...沢山いるゴルファー達にそれぞれそんな奇跡の一本がどこかにあるんじゃないか。
それはデータでもなく流行でもなく、値段もメーカーも関係なく、ただ自分が気持ち良く振れるだけ。

私は日曜日の最終ホール、無駄な力も入れずに本当に気持ち良く振り切れた...この感覚は数年振りだったかも知れない。
あのSLDRが、これからいつも同じ様なパフォーマンスを見せてくれるとは思わない...力を入れすぎれば曲がるだろうし、気を抜けばミスをするだろう...しかし、数年振りに振れた快感がきっと良い結果を沢山出現させてくれると思う。

...もし、N氏がやっぱり交換やめた、と言って来たら、ジープに言って新品の同じスペックを買って来て彼に渡す。
この一本は、私の為にここにやって来た一本だと思うから(笑)。