ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

巡礼...2

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もう少しヤツをどこかに連れて行きたかったのに...
そんな思いを残して、夕方の長島から天草へのフェリーに乗った。

29日夜には天草で一泊して、30日に雲仙にフェリーで渡り長崎を目指す。
鹿児島で借りたレンタカーはなんと走行距離13万キロのボロい大衆車で、運転席が軽のワゴンーRより狭く窮屈で、またカーナビの反応が遅かった。
乗り降りする度に頭をぶつけ、腰を痛め、1時間ごとに腰を延ばさないと座っていられない。

第2の目的地の「田舎暮らし協奏曲」の金子さんの所には、何時に着くのか判らないために奥さんには連絡しないで向かう事にした。
奥さんがいらっしゃらない時には、10年ぶりの金子さんの世界を見るだけでいいとも思っていた。

目印はペニンシュラオーナーズゴルフクラブの入り口。

10年ぶりに見た「チンチン像」の金子氏は、少し頭が傷んでいたけどカッと目を見開いて、相変わらず胸を張って踏ん張っていた。
残念ながら奥さんはいらっしゃらなかったけど、10年前より一回り大きくなった山椒の大木の下、共に座って海を見ていた手作りのテーブルとイスは、確かに十年分古びてそこにあった。

気持ちの中で先に行ってしまった金子さんに線香を捧げ、「また来ます」と言って帰った10年前の約束をやっと果たせた思いになった。

...自分は金子さんの友人ではない。
その証拠に、彼のブログの交友録や友人の中に自分は出てこない。
昔、金子さんが週刊ゴルフダイジェストの編集長をしている時に知り合い、そこから会員権の本の編集長をしていた頃にもよく話をした。
しかし、残念な事に一緒にゴルフをする機会は無かったし、10年前に訪ねて行くまで一緒に酒飲む事も無かった。
個人的に「親しかった」とは言い難い付き合いだったんだけど、多分男としての生き方に共感していたんだろうと思う。
「田舎暮らし」なんて、そんなに甘くはない事は百も承知で踏み切って、自給自足生活を築き上げ、百姓.漁師・エッセイスト・音楽家に木工家・蕎麦に酒にコーヒー....いわば遊びに徹底した生き方を50才から始めた男。
唯一の問題は現金収入の道が少なすぎると言う事...子供がいては絶対に不可能な暮らしと言っていた。
...正直言って、10年前に来た時に「自分たちには絶対出来ない」と確信した。

楽しい一夜を過ごして、帰る時に「また来ます」と自分が言った言葉が、ずっと気持ちに残っていた。
「本当に健康な人だから」と、10年の時間を流してしまった。


「ちょっと来るのが遅過ぎました」
「もう一度酒が飲みたかった」
そう言って、彼の世界に頭を下げた...

後で奥さんから電話があって、またゆっくり彼と作り上げた世界を引き継いで行くつもり、との事だった。
...10年前に奥さんが「ここは5月の新緑のころが一番美しい」と仰っていたのを、改めて思い出した。