ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ミニスカートを脱ぐ時

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後ろから追い越して行った男が、チラッと振り返って「なんだ..」という顔をした。

いつも一緒に回る友人にも、冗談まじりに「貴女、ずっとミニスカートね...飽きない?」なんて言われる

...子供の頃から、ミニスカートは普通のファッションだった。
中学時代も高校時代も、周りの仲間から、学校の先生から、道行く女性の殆ど全部..自分の祖母まで普通にミニスカートをはいていた。
...でも時が流れて、スカートはだんだん長くなり、パンツスタイルの女性が増え、ミニスカートをはくのは若い女性だけになって来た。

しかし、Sさんは身長も高かったし、スタイルには自信があったのでミニスカートをはき続けた。
複数の男の友人達に、その足の美しさを褒められた事もあって、自分はミニスカートが一番似合うと思っていた。

でも、やがて就職し、結婚し、生活は日々同じような繰り返しの連続となり、ミニスカートのSさんのスタイルを褒めてくれる人がいなくなった時、日常生活ではミニスカートをはくことはなくなった。

そんなSさんが再びミニスカートをはいたのは、近所の友人に勧められて始めたゴルフに熱中し出してから。
何度目かのラウンドの時、初夏の天気で暑さが伝えられたため、以前はいていたミニスカートの中から運動に使えそうなものを選んでコースではいてみた。
...動きやすいし、涼しいし...おまけに一緒に回った男性ゴルファーからも女性ゴルファーからも褒められた。
「スタイル良いですねえ」
「格好いいですよ」
「足の形がいいのねえ」

なんだか、久し振りにスポットライトを浴びた晴れ舞台のような気がした。
スコアも、それまでのベストを記録した。

それ以来、ゴルフコースではずっとミニスカートをはいて来た。
冬やあまりに強い日射しの時には、スパッツやレギンスと言ったものをミニの下にはいて、基本ゴルフの時にはずっとミニスカートを通して来た。
そして、ミニに似合うスタイルを保持するためにジムに通い、水泳と軽いトレーニング、それにウォーキングは欠かさなかった。

...しかし、スタイルは変わらなくても、年齢は身体に標を残して行く。
足の形は変わらなくても、セルライトや静脈瘤はなくしようもなく、顔は年齢を隠しようも無く....
「晴れ舞台」なのだから、と普段着ないような華やかなものを着ている事も、他人の目を意識しないと決めているはずの心にも、ふとした事で冷たい何かが染み込んでくる。

さっきの「なんだ...」というチラッと見せた若者の表情に、年老いたダンサ-の悲しみのようなものを感じてしまう。

...ちょっと辛い、か。

Sさんは、一度舞台を降りて、ミニスカートを脱いで、新しいスタイルでゴルフを楽しむ事にしようかと考える。
自分はパンツスタイルだって似合わない訳じゃない。
最近のゴルフ用の服装は、どんなものだって動きやすいと聞いているし。

ただ、Sさんはミニスカートをはく事をやめてしまうと、ジムに行ったりトレーニングを続ける情熱を無くしてしまいそうなのが怖い。

Sさんは、自分はまだまだゴルフが上手くなれると思っている...だから...