ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

時は去り、日が過ぎて...

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自分が惚れて来たゴルフというものは、死ぬまで楽しめるゲームだと思っていた。
でも、Mさんはそのゴルフが終わりに近づいて来たのを感じている。

まだ、それほどゴルフが一般的でない時に、仕事の関係上付き合いで始めたゴルフ。
道具もプレーフィーも馬鹿高かったけど、仕事を続けて行くためにはやらなければならなかった。
...もちろん嫌々始めたゴルフでも、始めてみれば野球で鍛えた運動神経のもと、すぐに熱中して上達して行った。
その後でジャンボや青木の登場でゴルフブームが起き、一歩先に進んでいたMさんは人の何倍もゴルフを楽しむ事が出来た。
大した実績は作れなかったけれど、競技に熱中して色々な試合の予選を通る事も多かった。
そうして何より、ゴルフで得た友人やライバルがゴルフを一層面白くさせてくれた。

だけど、そろそろ...
クラッチのライバルはもう既に、この世を去った。
友人達も多くはクラブを置いた...経済的な理由や健康面の理由で。

ゴルフの内容もすっかり変わってしまった。
飛ばなくなった...ちょっと前までは一緒に回った人に負ける事はまずなかったのに。
アイアンがダメだ...もうプロモデルはろくに当たらない。
アプローチが寄らない...あれほど手に覚え込ませたタッチがわからなくなった。
パットが入らない...老眼が進んで、グリーンの傾斜が判らないし、速さの変化に対応出来ない。
...もう、スコアもつける事が面倒になるほどになった。

そして何より、1年前に奥さんを亡くした。

ゴルフから帰って来たら、(スコアが良かったときだけは)奥さんにそのラウンドの出来事を話すのが楽しみだった...そうしてもう一回その日のゴルフを楽しんだ。
顔を見て結果が分かるらしく、スコアが悪かったときは何も言わずに笑ってビールを出してくれた。
...やがて奥さんもゴルフを始めて、時々一緒に行くようになり、定年になってからは奥さんと一緒に回る事のほうが多くなった。
コースでよく喧嘩もしたし、言い合いもしたけれど...楽しかった。
一生懸命スコアを追っていた競技ゴルフ熱中時代より、ずっとゴルフを楽しんでいた。

でも、そんな事に改めて気がついたのは奥さんがいなくなった後だった。
...ラウンドして来てもただ空しいのだ。

今でもティーグランドに立つ時には、旅立ちのときの興奮と期待が胸の内に湧き起こるんだけれど...帰って来た時に誰もいない淋しさに耐えられない自分がいる。

そろそろ潮時なのかな。
ゴルフっていうのは誰にも頼らずに、独りで立ち向かって行くゲームなのに...
19番ホールに妻がいないと空しくてたまらない、なんて。