ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ゴルフの神様の招待

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H子さんのキャディーバッグには、13本のクラブが入っている。
1W、4W、7W、4-P・A・Sのアイアン、それにパターだ。

しかし、実際に使うクラブは1W・7W・7-Sまでのアイアンにパターの9本。
「使わない4本分、重いなあ...」なんていつも思っていた。
そもそも、ゴルフ教室の友達の最新のアイアンはみんな5番からしかない。
自分のアイアンは夫が中古クラブ屋で探して来てくれたものなので、友達のアイアンの同じ番手よりずっと飛ばないし、ヘッドも小さくて難しそうに見える。
とはいえ、月に一度のゴルフでは100なんか絶対に切れない腕前だし、高い新品のアイアンを買う余裕も無いから、特に不満は無かった。

ただ、週に3日パートに出て自分のプレー代を稼いでゴルフを続けていたけど...最近はなんとなくゴルフというものにそんなにのめり込めない自分もいて、やがてゴルフをやめるかもしれないと感じてもいた。
収入の問題と、いつまでたっても100を切れずに上手くなれない自分の腕と、もう一つ熱中出来ないラウンドの積み重ねと...

使いもしないクラブを何時も持って行くようなゴルフに、飽きていたのかもしれない。
この前のラウンドまでは。

この日は朝から風が強く、それがホールを回るほど強くなって来て、みんな強風に翻弄されてスコアは二桁が何回も並ぶ有様。
そして、あるショートホール。
140ヤードを切る距離なのに、強烈な向かい風。
H子さんより先に打った3人は、いずれもウッドだったけど、みんな風に流され、叩き落とされ、グリーンには乗らない。
H子さんも最初は4Wを持ったけど、ふと何かの本に『向かい風には大きめのロングアイアン』なんて書いてあった事を思い出して、一度もラウンドでは使った事の無い4番アイアンを手にした。
どっちみち4Wで乗る自信が全くなかったので、やけっぱちの選択ではあったんだけど。
...打った。
なんとなくぎこちないスイングだったし、変なフィニッシュだったけど、ボールに上手く当たった感触は残った。
そして...見たのは何とも言えない不思議な眺め。
自分の打ったボールが、強い向かい風の中を、ゆっくりとゆっくりと真っすぐ進んで行く。
他の人が打ったボールのように流されもせず、曲がりもせず、吹き上がりも叩き落とされずもせずに、空中に浮いて飛んで行く。
まるでスローモーションの映像のように...風の中を行くボールは、本当に不思議なほど時間をかけて140ヤード先のグリーンの上に落ちた...

奇麗な光景だった。
ボールがグリーンに止まった後、「きっとこのショットは一生忘れない」と思った。
...そして
「ああ、今私はゴルフの神様に招待されたのかもしれない。」なんて考えが、突然頭に浮かんで来た。

なぜか、頭の中のゴルフの神様は「執事」の格好をしていたけれど...