ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

とりあえず、退院...

 

 

一歩も芝の上を歩かないうちに、今年の秋は過ぎて行く。

 

本来ならこの治療は1週の抗がん剤治療のあと3週間のチェック期間があって、それでワンクールの治療終了となる。

治らない病とは言え、まだ幾許かの希望を無理やり重ね、6人部屋の暗い真ん中ベッドに入院して11日。
ケータイを「室内使用禁止」なのに使い続けるクソジジーに関しては怒りしかなく、後でしっかり記事にするつもりだが...そのほかのしんどい入院暮らしの原因が、70年以上生きてきたそれぞれジジー達の人生の結果と分かっているので何も攻めるつもりは無い。

3人並びの真ん中のベッドで、1m横に猛獣のようなイビキと絶叫を出すじーさんと、一晩中いろいろ苦しそうな唸り声を出すじーさんなんかを誰が責められるだろう。
みんな同じ時代を懸命に生きてきた同輩・戦友の生き残り達なんだから。

俺は百円ショップで買い集めたいろんな耳栓をかたっぱしから嵌めて応戦を試みたが...見事に粉砕された。
もうそれは全く無駄なこと、みんなも諦めた方がいい。
むしろ耳栓で変化させられたイビキ達は怪獣の唸り声の如く悪夢の元になるだけだ。

俺の普段の生活は夜中の12時くらいまで仕事をして、2時くらいまで晩酌をするようなパターンなんだけど...病院じゃ9時の消灯時間なんかがあってそうは行かないので、早めに寝るつもりでベッドに入る。、
耳栓を気にしながらウトウトして、「おお、イビキの銃弾の嵐の間で5〜6時間は寝られたか...偉いぞ、俺!」なんて思ってケータイの時計を見ると......なんと、まだ12時前で、2時間も寝られていない。
しょうがないのでトイレに行って、(電気をつけられないので)ちょっとケータイを見て無理やり寝の体制に入る....当然寝られるわけないが、それを朝まで繰り返す。
毎日、毎日、毎日、毎日....ああ、入院てのは疲れるもんだ。


それと...悪口書くつもりはないんだけど(悪口だけど)、「ご飯が美味しくなった!」という記事は間違い。
この記事を書いた日と、もう1日だけおかずが「唐揚げとクリームコロッケ」の日があった...俺にはその二日だけが「ご飯の美味しい日」だった。
後の8〜9割はおかずが味の無い魚...これは俺の飯が「心臓食」で「基本減塩」なのが原因なのはわかっているんだけど....味のない食い物はなんて「まずい!」んだろう。
なんとかご飯を食べる為に、ついている「味付き海苔」数枚とこっそり持ってきた減塩ふりかけを頼りに必死で食べたけど、完食できたのは2〜3回で11日間で体重は結構減った。
おまけに抗がん剤の副作用とかで「便秘」になり、クソをするのも一苦労(泣)。
ホント、「心臓食には味が無い」...横の「糖尿食」の人の飯の方がずっと美味しそうだった。

 

こんな生活があと20日近く続くと思って、山のような荷物を持って来たのが(本・着替え等)...急に「今週末退院です」の神の声。
治療自体1週間で終わっていて、後は細かいチェックと飲み薬の修正を3週続けるのがパターンだが、それなら通院で大丈夫と言う事らしい。
もちろんこちらとしても、そりゃあ嬉しいもっけの幸い天の声。

昨日、ヘロヘロになりながらやっと家に帰ってきた...寝不足と飯が食えないことで思ったより体力を消耗したようで歩くのもふらつく。

そんで...ああ、家の布団の上は実に気持ちが良い。
静かな夜は悪夢も無く、ぐっすりと眠れる。

 

...顔を忘れられていた飼い猫の柚が、やっと夜になって俺を思い出したらしく近づいて来た。