陽は出ているし、風もない。
梅はもう少しだが、桜はまだまだ。
朝晩は冷え込んだって、日中は十分暖かい。
ジジーにババーの散歩日和だ...自分がジジーと思っちゃいないが。
こんな日はあてのないぶらぶら歩きが気持ち良い。
気持ちの良い川縁の散歩道。
細かい世間の暮らしと離れて、広い空相手に話しゃいい。
「昔から、「旅は急ぎ」と決めては居たけど
急いだ旅にはもう疲れちまった。
今はぶうらり、ゆうらりと
あてのない、風に任せた旅がしたい。」
「でもなあ
既に体は壊れ始めて、金だってほんの少ししかありゃあしねえ。」
こうやってカッコつけるのも、気持ちのいい散歩の時間だけ。
自分じゃ出来ない事をした気分になって、
バカ噛み締めながらの散歩も悪かない。
それにさ
ホントは、あてはあるんだすぐそこに...俗物で小心な凡人の自分らしい毎日が。
「あてのない旅」なんて、そんなジジーの叶わぬ夢って事さ。
さあて、もうすぐそこが終点だ。
ヤクザなジジーから、普通のジジーに戻って、
今来た道を帰る時間だ。