ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

来訪者

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長女がドイツに9日間程出張するので、飼っているネコを預かって欲しいと言って来た。
今は仕事の為に別の場所に住んでいる長女は1匹の猫を飼っていて、夏休みやゴールデンウィーク、年末年始の休みなどで我が家に2日以上滞在する時は、必ずこのネコを連れてくる。

実はこのネコはうちの柚の1年半程「姉」に当たるネコで、母ネコは同じだが相手が三毛猫系の短毛種だったようでうちの柚より一回り以上大きく、毛の質が全く違う。
しかしそもそもこの猫を飼うようになった切っ掛けが、「母ネコに捨てられた弱い子ネコ」という点で共通している。

ある日、娘の部屋(アパートの1階)の床の下から、小さな赤ちゃんネコの鳴き声が聞こえて泣き止まないと言うことがあった。
気になった娘が大家さんに相談して、一緒に床下に潜ったそうだ....すると大家さんが床下の小さな隙間に挟まって動けなくなっているまだ乳離れもしてない子猫を見つけた。
大家さんの手では入らないので、娘が思い切り手を突っ込んでやっと助け出したのが手のひらに乗るような大きさのこのネコ。
「さあ、このネコをどうしよう」と言うことになって、大家さんの家では飼えないけど娘が買うなら一緒に助け出した縁もあって黙認する、と言うことになったらしい。
もちろん動物好きの娘が、このネコを捨てられるはずもない...大家さん公認で猫を飼うことになってしまった...名前をくーと名付けてスポイトでミルクを飲ませることから始まって大変だったらしい。
普通にえさを食べられるようになって、大家さんも一緒に可愛がったとか。

しかし、このネコは弱かった為に親に見捨てられたせいか、非常に臆病で娘と大家さん以外には慣れないネコになってしまった...我が家に来ても皆の顔を見て「来るな!」という意味で「シャー!」と威嚇して「ウウウ~!」と唸り続ける。
私にも全然慣れないしもちろん触らせない...下手に手を出すと柚と違って引っ掻かれたり噛み付かれる。

しかし、このくーから1年半後に生まれた柚は、柔らかいグレーの毛質で身体は小さく姉妹なのにまるで似ていない。
おまけにくーよりさらにひ弱で親に捨てられたネコ...何時も一番始めに餌の茶碗の前でずっと待っているのに、餌が来ると他の兄弟ネコに弾き飛ばされてえさを食べられない....親の後を追って行くのに小さすぎて段差も越えられず、いつも置いてきぼりで弱っていたので長女の所に遊びにいていた次女が「これじゃ死んじゃう」と拾って来たネコだ。

二匹が会うと、くーはすぐに「シャー!」と鳴いて威嚇し、ずっと「ウウウ~」と唸り続ける。
それに対して柚は不思議そうな顔をして近付いて行く。
...そしていきなり鼻面にパンチを浴びて、驚いて逃げて行く。
くーもそれ以上は攻撃しないので、そんな関係が家にいる間続く。
敢えて二匹に喧嘩はさせたくないので、1階と2階にテリトリーを分けて生活するようにしていたけど、一寸した隙間を見つけてはお互いに相手の所に進入してしまう。
柚が2階のくーのテリトリーに進入した時には脅されて逃げ帰って来るが、くーが1階に来た時には柚が恐る恐るくーの後をついて行くのが笑える。
別に威嚇も何もしないで距離を開けてくーの後ろをついて行く...くーが気がついて柚を威嚇すると、柚は自分の「絶対安全」と信じている次女のパソコンの台の下に逃げ込む。
この場所、あまりに柚が臆病で可哀想なので、何かやってここに逃げ込んだらもう見えなくなったことにしようと「柚の逃げ場」にした所。
何か悪いことやって怒られても、ここに逃げ込むともう追わないようにした...もとはカーテンがかかっていたが今は無くて丸見えの場所なのだが、柚にとっては「なにやってもここなら誰からも見えない」場所。
近くに顔を持って行っても、絶対に柚は視線を合わせない...ただひたすらじっとして嵐の過ぎるのを待っている様子がとても可笑しい。

さすがにくーにはそれが通じないのだが、安全と信じてる場所にくーが行くのは可哀想なので、速やかにクーを2階に追い払う。

昨日、出張から帰って来た娘をくーと一緒にアパートまで送って行った。

今、柚にとって久しぶりの安心の日々...きっと「あれは何だったんだろう」なんて思ってるんだろうな。