ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

狂気の科学者・ブライソン・デシャンボー その2

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モー・ノーマンの打法...後年「ハンマー打法」なんて名付けられたが、彼が独学で作り上げたスイングは実に合理的なものだった。
ゴルフスイングというのは、何よりもその「再現性」が重要と昔から言われているが、いつからかゴルフを始める人たちは先人達から伝わるスイングを真似して覚えてから「再現性」を高める努力をする、という順番が当たり前になっていた。
だから、今ではほとんど全部のゴルファーは、ハンドダウン気味で構えて、ダウンで左腕の通るスペースを無理やり空けて、インパクトを迎える、なんて動きをしている。
そのくせ、「頭を動かすな!」とか口うるさく言いながら...そんなの腕を曲げなきゃ無理だってえのに(笑)。

それに比べて、モー・ノーマンのスイングは初めからインパクトと同じようにスペースを作り、左腕を絶対曲げずに常に同じインパクトを迎える。
「正確さ」を追求するなら、これが一番科学的なスイングだろう。

後年彼のスイングを「ハンマー打法」と名付けて解説したイラストのポイントは、「重いハンマーで釘を打つ動きと全く同じだ」という事だった。
器用な手首の動きを抑えて、体の大きな筋肉...つまり腹筋・背筋・太腿・両肩・広背筋等々をしっかり踏ん張った脚の上でシンプルに動かしてクラブを振る。
書くと難しい動きのようだが、重いハンマーで釘を打てるなら、誰でもできる動きなのだ。

実際、「ボールがちゃんとつかまらない」という悩みのある人がこのハンマー打法をやってみると、意外に簡単にボールが捕まるようになる。
割とすぐに結果が出るのだ。

じゃあ、「なぜその打法を続けなかった?」...それが問題なのだ。
俺は、ゴルフのゴの字を知る前にこの打法を知って初めていれば、今でも絶対にこの打法を続けていた、と思っている。
半端に初めて、なまじ昔から伝わるスイングで「ゴルフショットの快感」を知っていたが故に、ハンマー打法を続けられずに元の打ち方(複雑でミスの出やすい)に戻ってしまった。

つまり...はっきり言うとこの打法でボールが捕まり出すと、ほぼ例外なく自分の欲望に負けて、それまでに覚えた旧ゴルフスイングの動きが毒薬となって混じってきて、自分のゴルフをバラバラにしてしまうのだ。

ハンマー打法は、手の動きを極力抑えてシンプルに体の大きな筋肉を使って「同じ」スイングでハンマーで釘を打つようにショットを打つ。
初めは上手く捕まって「これはゴルフが楽しくなる」と思う。
しかし、このスイングはショットが正確にはなるが、「ここ一番」の飛びは無い。
器用に動く「手」が作り出す「たまにちゃんと当たった時の感触」が乏しい。
最初のうちは我慢していても、意識して飛ばそうとしてうっかり「手」を使ってしまうと、大ミス...つまり左方向への強烈なフック玉が出る。
そのうちに、自分のスイングに染み付いたちょっとした手首の動きが無意識にでも出ると「え〜〜?!」というミスショットになる。
ゴルフを始めた頃に教わったスイングの動きは、特に手首の使い方などは体に染み付いてしまっていて消し去る事が出来ない。
そして、練習しても練習しても、左へのミスは消えてくれず、そのうち修正の「やり過ぎ」の右へのミスも出てくる(モー・ノーマンが練習の虫で、常に黙々とボールを打っていたというのは同じ理由かな、なんて思ったり)。

そのうち「以前の普通のスイングならもっと楽に飛ぶはずなのに、我慢してもこのミスかよ」なんて思えて来る。
グリップを太くした為の、キャディーバッグへの入れ戻しにグリップ同士が絡まるのにも腹が立って来る。

...結局、みんな元の打ち方に戻って、ハンマー打法を試したことも忘れてしまう...

そこにモー・ノーマンを研究してスイングを作り上げたという、ブライソン・デシャンボーの登場だ。
彼が20キロ以上も筋肉をつけて今年結果を出しつつあるのは、ひょっとしてノーマンのハンマー打法の問題点を彼なりに解決したからなんじゃないのか?

ということで、まずアドレスからチェックしてみる。

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以前からこうだったけど、モー・ノーマンとの一番の違いはグリップ。
左手はストロングでパームグリップ、右手はほとんど真横からという超フックグリップのノーマンに対して、デシャンボーは左手は非常に浅く握っていて(親指はシャフトより左)、右手もかなりシャフトにかぶせたウィークグリップ。

ハンドアップ気味の左腕一直線の構えで、非常につかまりやすくなったボールをちょっとした手の悪い動きでも左へ行かないように考えたグリップだと思える。
テークバックからトップも、微妙にモー・ノーマンとは違って来ているのも面白い。

まあ、長くレッスンイラストを描いてきたと言っても、全く素人の勝手な解釈感想だから責任なんか全く取らないけど、彼の解決法が一般のヘボにも有効だとしたら・・・ハンマー打法は未来の打法になれるはず。

 

ちょっと面白いから、次回にもう少し。