ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

気合い

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Nさんは、40歳になる。
見た目は若く、ちょっと見は30前に見えたりする。
でも、そんな風になったのはこの2~3年だ。

もともとNさんは学生時代から大人しく、何度も教師から「引っ込み思案」と評価されたくらい消極的な性格だった。
そんなNさんだったけれど、23の時に就職した会社の先輩に見初められて結婚した。
口八丁手八丁の先輩に、何がなんだかわからないうちに押し切られて結婚してしまった、と言う感じだった。
その結婚生活は10年ちょっとで終わった。
夫となった男は、調子がいいときは何処までも乗って行くけれど、少しでも逆境になるとNさんや周りに当たり散らし、悪い事はみんな他人のせいにするような男だった。

幸い子供がいなかったので、離婚はすんなり決まった...夫には他に女がいるようでもあったからだが。

その後、元気がないNさんに、まだ健在だった父親がゴルフを勧めてくれた。
昔はシングルだった事もある父親に教えられてゴルフを始めると、すぐにNさんはゴルフが一番の楽しみになった。
パートの合間の、月に2度ほどのコースラウンドを楽しみに生きている、と言っても良いくらいゴルフが好きになった。

そうしたラウンドの途中で、Nさんは自分の性格と向き合わざるを得なくなった。
引っ込み思案...気持ちを表に出さない、自分の意見を言わない、いつも冒険なんかしようとしない、まるで後ろ向きの性格。
裏を返せば、失敗が怖くて安全な所にばかりいようとする、自分の責任で何かを決めたくない、トラブルになって格好悪くみっともない姿を見せたくない...それでも失敗すれば悪いのは自分じゃない、と思いたい自分がいるということ。

コースに行く度に、そういう自分を再確認させられた。
30代も終わりに近くなった頃、Nさんは「こんな自分は最低だ」と認める事にした。
そんな自分がどんどん嫌いになって、我慢できなくなったのだ。

...ゴルフのスタイルを変える決心をした。
「行く!」
「逃げない!」
「突っ込む!」
「届かせる!」
「やる前に失敗なんか考えない!」

池ポチャや、OBや、グリーンオーバーや、3パット4パットが多くなった。
でも
「最近よく笑うようになったな」と父親に言われた。
「あなたがそんな事はっきり言うなんて...初めて聞いた」なんて友人に言われた。
Nさんは、ゴルフで自分を変えるために「気合い」を入れようとしているだけなんだけど、それが普通の生活にも影響してきたようだった。

...今のNさんのゴルフには、「慎重に」とか「大事に」とか「危険を回避して」なんて考えはない。
打つ前にボールを見て、クラブを見て、「気合い」を入れてスイングする...それだけだ。

...特に、珍しくバーディーパットを打てるときなんか、絶対にショートはしない。
それで3パットや4パットしようと、5パットになったって、本当に心から楽しいし嬉しい。

Nさんの「気合い」は、ゴルフから始まって、Nさんの全てに満ちて来ている。