ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ガッツポーズ!

イメージ 1

俺はタイガー・ウッズが大嫌いだ。
とは言っても、はじめから嫌いだった訳じゃあない。
デビューした頃の、ウッズは熱烈に応援していた。
なにより、それまでの古い空気の漂うような男子ツアーに、たった一人で切り込んでいった向こう見ずな戦士のような初々しさがあった。
彼に敗れていったプロ達の、驚いたような顔が印象的だった。
そして、自分より強い(と思われる)ものに望んでいくとき、あのガッツポーズは自分を奮い立たせるモノとして、好意的に見ることが出来た。

しかし、それもグランドスラムを完成するときまで。
誰もが認める「キング」になった今、どういう状態であろうと、あの若い挑戦者の頃と同じ、いや、もっとくどくなったガッツポーズは、俺には醜く眉をひそめるモノとしか感じられない。
まして、最近の彼のガッツポーズは、観客を煽り、同伴競技者を威嚇しているようで、とても正視できるものではない。
今では、タイガーのガッツポーズが出そうになるとチャンネルを変える...俺が熱中したゴルフの「世界一」がこんなに醜い様をするとは...と。

そして、今はそこら中で、あの真似をして「ド派手」なガッツポーズをやりまくる奴だらけ。
同伴競技者が次のパットを打つのに待っているのにもかかわらず、何時までもげんこつを突き上げてポーズする奴、全く他の同伴競技者の迷惑を考えずに興奮して動き回る奴...

例えば、長いパーパットがやっと入って、「よし!」と嬉しそうにげんこつを握る。
久しぶりのバーディーパットが入って、「入ったー!」と万歳をして喜ぶ。
目標だった事が実現できて静かに拳を握って、力を入れる。
...そんな風だったら、同伴競技者も「ナイスパット!」とか「ナイスバーディー!」とか、「おめでとう!」と言って、喜びを分かち合える。
微笑ましいと思うし、本当に良かったなあと思える。

だが、一人で興奮して、鼻の穴をふくらまして、「どうだ!」と言わんばかりの派手なガッツポーズをしつこくする奴なんて、ただスパイクで蹴っ飛ばしてから「お前だけがゴルフやってるんじゃない!」と言いたいだけ。
こんなガッツポーズのこんな騒ぎは、ゴルフ本来の楽しみ方とは違うんじゃないのか?
もっと紳士的な(俺は紳士ではないけど)、侍的な、騎士的な部分が必要なのではないか?
俺は、ゴルフにはあの「武士は食わねど高楊枝」の、「痩せ我慢」の美学が中心にあると思うんだけど...

タイガーの「ガッツポーズ」は、あの朝青龍の「万歳ガッツポーズ」と変わりない。
相撲は、負けてもきちんと礼をして、土俵を降りる。
礼をする前に相手が、あんなガッツポーズをして騒いでいたら、走っていって跳び蹴りしたっていいだろう。
タイガーはもう押しも押されぬゴルフ史に残るゴルファーなんだから、どんなに気合いの入った時だって、静かに軽く拳を握って「ニヤッ」と笑ってウィンクでもしたら、本当に格好いいのにと思う。

俺が今までに見た、一番格好良いガッツポーズは、先に描いた「30ヤードのナイスショット」の時...前の打席にいた若い男が、身体の不自由な男のやっと打てた30ヤードのナイスショットに、彼に見えないように後ろを向いて小さく拳を握って「ニコッ」と笑ったガッツポーズ。
こういうガッツポーズをする人とは、一度一緒にラウンドしたい...きっとスコアはともかく、素晴らしいラウンドが出来るだろうなとあ、と思う。